疾走感と夏の刹那さ〜JUDY AND MARY『MIRACLE DIVING』


てゆうかさ、アルバム単位で書けばいいんじゃない?

と、私の中の何かが言いました。
なるほど。



夏に聴きたくなるアルバムその1
JUDY AND MARY『MIRACLE DIVING』。95年12月リリース。オリコン最高位2位、売上枚数93.9万枚。JAM3枚目のアルバム。

MIRACLE DIVING

MIRACLE DIVING

JUDY AND MARYは……説明いらないか?
ヴォーカルYUKI、ギターTAKUYA、ベース恩田快人、ドラム五十嵐公太からなるバンド。
91年結成。93年にデビューし、2001年に解散しました。代表曲は「そばかす」「クラシック」「散歩道」他。
解散後、YUKIはソロで活躍しています。



発売時期を見ると気付くのは2点。


?JAM最大のヒット曲「そばかす」以前に発売されている点。
この『MIRACLE DIVING』を完成させて一息ついて、もうすぐ完成だよーんってときに「アニメの主題歌を書けコラ!リミット一週間だ!」と会社の人に言われてやっつけで作ったのが「そばかす」です。(誇張表現あり。あしからず。「曲はやっつけじゃない」byYUKI)
というわけで、すでに「Over Drive」などがヒットしてできたのがこのアルバムです。
アルバムの完成度は決して高いとは言えないのですが(YUKIが軽くスランプで個人的な詞が多いから)、JAMが最もバランスの取れている時期の作品なので、その強さが感じられます。


?夏じゃねえじゃん。
……発売が12月なんだよね。
でも曲目見ると、初夏〜秋の曲が多いという。YUKIはしばらく曲の季節とリリース時期のことを全く考えていなかったそうです。そこらへんのテキトーさがYUKIらしいなと思うけど、周りは大変だっただろうなと同情します。本人は認めないかもだけどお姫様扱いでしょ、確実に。


アルバムのプロデュースは前作「ORANGE SUNSHINE」に引き続き佐久間正英
のちに佐久間氏はJAMについて「ロックをアートに昇華させたバンド」みたいに語っていましたが、まだこの頃はそうでもなかったかな。
ただJAMがすごくシビアなバンドだったんだなあと今なら分かってしまうアルバムではあると思う。てゆうかJAMは「売れることが目標」であったことがあの8年間に凝縮されている気がして、今となっては怖くもあるのです。
YUKIとTAKUYAの若い感性が光ってる、イケイケなアルバムです。


1.Miracle Night Diving (作詞:YUKI 作曲:TAKUYA)
一応表題曲ってことになるのかな。
思いつきで、プールの中で歌って録音したYUKIのアカペラから始まるこの曲。
マイクをいくつもダメにしたそうです。バブリーです。
YUKIの書く詞の意味不明さ、うねりまくる演奏で、うねうねと暗い海を泳いでる気分になる曲。
ライブで「今夜 冷めたまなざしに」でウインクを飛ばすYUKIとTAKUYAを思い出します。
最後のラップ?とかもう、キャプテンフックからボディだパンチだって、なに?
飛び込んでしまったらもう、「途中で上がることも戻ることもできないの」。


2.Over Drive (作詞:YUKI 作曲:TAKUYA)
7thシングル曲。JAMがブレイクした曲とされています。
最初のギターの音からワクワクする感じ。とにかく爽快!!
「夢はいつまでも覚めない」。ラストドームでJAMが最後に演奏した曲です。
JAMは今も私の一部です。


3.KYOTO (作詞・作曲:TAKUYA)
詞も曲もTAKUYA。ROBOTSでも歌ってるね。
個人的にはTAKUYAが歌った方がしっくりくるなあ。
TAKUYAの故郷・京都の春の夢。
「汽車」という単語をチョイスしたところがTAKUYAらしくて好きです。


4.Little Miss Highway (作詞:YUKI 作曲:五十嵐公太
これ私だいすきなの。ちょっと変わった曲なんだけど。
高速道路びゅんびゅん飛ばしながら聴きたい。
「たいくつな夜をくれた人 いつも文句ばかり 言ってしまって ゴメンネ」
「生まれ変わっても どこにいても あなた探している バカなあたしに気付いて」
恋するとどうして不器用になるんだろう。なんでうまく言えないんだろう。
それでもあなたに会いたい。
運命みたいに、会いたい。


5.あなたは生きている (作詞:YUKI 作曲:恩田快人
切ない恩田節キタコレ。
YUKIは恩ちゃんの曲にはなぜか切ない歌詞を乗せる法則。
悲しい別れを経ても、ずっと記憶に残しておきたい想い。
……ZARDの「きっと忘れない」とかぶるな。
それよりも私が!私を!な感じだけど。
「叶わない約束を 待ってる」。


6.ドキドキ (作詞:YUKI 作曲:恩田快人
8thシングル曲。
恩田節!!
95年は阪神大震災がありました。神戸は恩ちゃんの故郷。その思いを曲に託し、上がってきた詞を見て驚いたそうです。
青春の日々、ドキドキをYUKIは歌いました。
「空を仰いで 手を叩いて 大地にキスをするような この想いが強いのなら 傷ついてかまわない」
若いという強さを感じる、大好きな曲です。
ずっとこの想いを持っていたい。


7.ステレオ全開 (作詞:Tack and yukky 作曲:TAKUYA)
後に9thシングル「そばかす」のカップリング曲としてシングルカット。
ステレオ=YUKIです。
ハードでキーも高いけど、YUKIのボーカルの強さが際立ってます。
「この口唇が いつか疲れて 声がかれても 歌ってあげるわ その胸に届け」
YUKIがこれからも歌っていくのよ!!さあついてきなさい!!って歌ってます。ええ、ついていくわよ。


8.Oh!Can Not Angel (作詞:YUKI 作曲:五十嵐公太
おきゃんなエンジェル。
転じて「天使なんかじゃない」……歌詞、マミリンっぽくない?!と勝手に盛り上がったのでした。
公太さんの曲は化けるというインタビューを読んだことがあるけど、これは最初どんな曲だったんでしょうか。気になります。


9.プラチナ (作詞:YUKI 作曲:恩田快人
甲本ヒロト真島昌利がコーラス参加している。かなりブルハを意識していると思われる。


10.アネモネの恋 (作詞:YUKI 作曲:恩田快人
せ……切ない……。
「最初から わかりきってたの わざと 騙されてみたかっただけよ」
からの
「あなたの声が 好きだったわ とても あなたの髪が 好きだったわ」
YUKIの語尾の「わ」の発音がすげえ好きなんだけど、かわいいんだよねえ。
いつもよりも晴れた空が切ない、もう秋の気配のする失恋のうた。
アネモネ花言葉は「はかない恋」。


11.帰れない2人(作詞:YUKI 作曲:恩田快人
TAKUYAのギターとYUKIの歌声。
これ、泣きながら歌ってたんじゃないかな。
「あなたの世界が 壊れそうになったら あたしの言葉を 思い出して 幼い 水色の幻」



私は完成度は高くない、と書きましたが、なんというか、アルバム全体で、結構個が目立っている気がします。
YUKIはもちろん、「KYOTO」のTAKUYAとか「ドキドキ」の恩ちゃんとか、バンドとしてというより個人としての思いが強く出ている感じ。
恩ちゃんがロリータパンクやりたくて作ったJAMは徐々に変わっていきます。YUKIはよく「バンドは生き物」と言っていたけど、デビューから2年で、既に初期とはかなり違う音楽をやるようになっていきました。
バンドはみんなで作るもの。
でも主導権が恩ちゃんからTAKUYAに移行していきます。
その一歩手前の、バンドがバンドしていたアルバムだなあと思います。
どうでもいいけど演奏超うまいよね。普通に聴いてたけど。




90年代を超高速で駆け抜けたバンドの、ブレイク寸前の危うさと疾走感を感じるアルバムです。
それにしてもギターの音うるっさい。さすがの変態ギタリストTAKUYA。




手元に資料がなくていろいろ適当に書いてしまいました。
ニュアンスとか微妙なところは今度直す。から許して。